サプライズ★フィナーレ
本当に送ってくれないの?

もう少しだけでも、そばにいたいのに。

わがままってわかってる。

せめて家に着くまででいい、一緒にいたい。

今までずっと翔への想い閉じ込めてきた分、一つになり輝き出した想いは、絶え間なく溢れ続けて止まない。

そして些細なことで揺れ動く。

今も昔も、私が感情に振り回されるのは翔だけ。

でも約十年、恋心感じないように自分を騙し続け、感情を押し殺すのは慣れてる。

今夜は、大人しく帰ろう……
なんて、泊まるほどの勇気決してないくせに。

エレベーターの到着音がして扉が開くと、ゆっくり翔の温もりから解放され、体以上に心がひんやりとした。

そのままトンと中に押され、翔が一階のボタンを押す音がする。

振り返ると、翔が"開"のボタンを押しながら切なげな瞳で私を見つめていた。


「マジごめん……本当は、全然時間ないんだ。これ以上イチャつく余裕もない。でも……エリといられるなら他のことなんてどうでもいいって思うほど、一緒にいたかった。会いに来てくれてありがとう。今の仕事が終わったら、俺の時間全部エリにやる。だから今夜は、大人しく帰れ」


わかってる……
本当は、今ここにいる余裕もないってことも。

だってほんの少しでも余裕あれば、絶対に翔は送ってくれる。

私を一人で帰らせるなんて、絶対にしやしない。








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