サプライズ★フィナーレ
そんな日々の中、また悪夢から逃げるように目を覚ますと、ベッドサイドから心配そうに覗き込む翔の姿が目に入った。


「大丈夫か? 怖い夢でも見たのか?」


「……翔!」


私は、飛び付くように翔の首に手を回しギュッと引き寄せた。

やっと会えた、来てくれた。

会いたかった……ほんの一秒でいい、抱き締めて欲しかった。

翔は、そんな私を抱き起こしベッドサイドに座り直すと、長い黒髪を労るようにゆっくり優しく撫で下ろし続けてくれた。


「ごめん、そばにいてやれなくて。あの日からアトリエに泊まりっぱなしでさ。やっとメドついたから超飛ばして来たけど、五時までしかいてやれない。……ごめん」


いい……
今抱き締めてくれてるから。

三十分の為に来てくれるなんて……
嬉しさ以上に切なくなる。

翔の爽やかな香りに包まれるこの時間こそ、私が何よりも待ち焦がれる瞬間。

そして泣きたくなるほど愛しい時の始まりなのに、やっと幸せ掴めたのに……この腕を手放さなきゃならないの?

手放すことが、翔を愛してる証なの?

……嫌……嫌、嫌、嫌っ!!!

やっと心から翔の温もり感じられるようになったのに、渇望し続けてきた奇跡が起きたというのに。

このあたたかい腕を失うことは、私の全てを失うに等しいというのに。
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