サプライズ★フィナーレ
結局、LINEも電話もことごとく無視され、翌朝アトリエに来てみれば、海外出張ときた。

そんなの聞いてない。

まさか私へのあてつけ? 本当に出張?

翔輝君に電話すると本当で、帰国は五日後らしい。

こんなまま五日も会えないなんて……
何もやる気起きない。

はぁ~……帰ろ。

どうせ仕事ないし。

肩を落としアトリエ正面にあるエレベーター横の階段に回ると、!?……翔輝君が壁にもたれて私を見ていた。


「……送るよ」


車の鍵を振りながら、翔と同じ顔で笑みを浮かべる姿に、自然と涙が一筋流れた。

また翔を期待した自分が滑稽で、翔輝君の優しさが切なくて、涙が溢れて止まらない。

そんな私を、彼はすぐに優しく包み込んでくれた。

……爽やかなグリーンシトラスの香り。

この香りに包まれるのは初めて……翔とは、違う香り。

今この手を取れば、この先ずっとこの香りに甘えられたら、穏やかな永遠の愛が手に入るの?

私は、ぼんやり考えながらそっと目を瞑り、目の前の肩に頬を預けるのだった。


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