サプライズ★フィナーレ
疑惑
____翔に、もう何週間会っていないのだろう?

強い南風の中、バルコニーの手摺にもたれ、今にも降り出しそうな暗い空を見ながら、大きな溜め息を付いた。

少し離れた空では稲光が放たれ、稲妻が轟音と共に大地を揺るがしている。

まるで私の心を映し出してるような天候。

もうあの稲妻に打たれ、翔の記憶全てを失えたらどれほど楽か……。

電話もLINEも会いに行っても拒否。

途方にくれるを通り越し、もう諦めの境地にいた。

それでも最後にと、部屋前で待ち伏せしたところ、なんと翼と帰宅ときた。


『何しに来た? お前と話すことはない。帰れ。……翼、今夜泊まってけよ』


『……』


『待って! 愛梨』


凍結した顔の私に、更に100年は溶けないであろう冷淡な顔で、信じられない言葉を投げ付けてきた。

私は、死刑宣告を受けた心境で、逃げるようにその場を走り去った。

そして気が付くと、自室に座り込み床に崩れて大号泣していた。

もう完全に嫌われたの?

翔との至福の日々は、全て夢だったの?

こんな辛い結末になるのなら、兄妹のままの方がよかった。

狂おしいほど魂に刻まみ込まれた愛の刻印が、片時も止むことなく胸をジリジリ焦がし続けた。

翔との甘すぎる記憶の全てが、今も私の全てを独占、かつ抜け殻とさせていた。
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