サプライズ★フィナーレ
「ちょっと……」


ペチン! と、翔のオデコを叩いてやる。


「ケチケチすんな。俺になら金払ってでもしてほしい女、山ほどいるだろ? タダでしてもらえるなんて有り難く思いな。他にする奴もいないくせに」


出た……
爽やか好青年のルックスと正反対の俺様節にカチン!

再度オデコをペチン!


「翔が、レンタル彼氏なら寝る間もないね。そんな翔にしょっちゅうデートしてもらえる愛梨は幸せよ~」


そんな私達を見ながら左斜め前の母は、嬉しそうに笑って実に母親らしくない事を言ってのけた。


「だろ?」


人の膝で勝ち誇った顔して見上げる翔に、更なるカッチーン!


「食べ歩きが趣味の翔の為に私が付き合ってあげてるんですけど……。いつも仕方な~く彼女いない翔に付き合ってあげてるんですけどっ」


そしてもう一発食らわせようとすると、すぐに右手首を掴まれ阻止される。


「嬉しいくせに。意地っ張りな奴。エリさ、昔は素直で可愛かったよな……。ちなみに俺は、彼女がいないんでなく必要としてないんだ。覚えときな」


そして手首を掴んだ反対の手で素早く両頬潰しの刑をお見舞いされた。

痛~い!

私が、必死に魔の手から逃れる為に抵抗すると、翔は楽しそうに笑いながら私の頭を逞しい胸に強引に引き寄せた。


「もう! やめてよ」


悪かったわね、可愛くなくなって。

誰のせいだと思ってるの!

でもこの男には、何を言っても無駄。

かないません。

私は、小さな溜め息を付いて翔の魔の手から強引に逃れると、母の背後の美しく照らされた薄紅色の桜を黙って見上げた。
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