サプライズ★フィナーレ
翔輝君との約束の五分前、目の前には、巨大なオレンジキャンドルのように輝くタワーが、そびえ立っている。

初めてここに来たのは、翔がこのビルにオフィスを決めた日の夜。

翔の誘いで、二人でお祝いの乾杯をした記念の店。

カップルシートで密かに照れながら、煌めく夜景と甘いお酒に酔いしれたっけ。

何より翔の未来を語る、自信に満ち溢れた横顔に……。

ねぇ……なぜkissしたの?

……まだ私を……?

ふと気付けば、約束のラウンジで夕暮れをぼんやり眺めながら、そればかり考えていた。

怒鳴ったことへの謝りの電話を入れようと、久々に緊張しながら電話すると、信じられないことに番号が変えられていた。

……もう忘れようとカクテルを飲み干した時、ふと人の気配に顔を上げる。


「お疲れ様。……翔輝君?」


「……お待たせ」


彼は、まるで愛想笑いのような顔してから、向かいの席に着いた。

どうしたの? 何だか変……。


「お腹すいた? 何か食べる?」


「いや、エ……っと、別の店がよくない? ……愛梨は」


「どっちでも」


彼は、目を泳がせ歯切れの悪い返事をして、すぐにお酒をオーダーすると、なぜか居心地悪そうに夜景を見つめ続けた。

こんな翔輝君初めてで、困惑してしまう。

お酒を出されると一気にグラスを空け、限界といった様子で立ち上がる。


「行こう」


「……うん」


返事するより先に行ってしまう彼を、私は慌てて追い掛けた。










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