サプライズ★フィナーレ
CM撮影
撮影を五日後に控えた、六月末の夕刻時。
高層階のオフィスで一人、目の前のキャンパスに繰り広げられるピンク、オレンジ、イエロー、ブルー、パープルの光の競演に目を奪われる。
綺麗……心が震えるほどに綺麗。

ううん、綺麗なんて言葉じゃ全然足りない。

ここで淡い光に包まれいつも願うのは、翔もこの空に気付いていますように……
癒されていますように。

そしてそれ以上に強く思うのは、二人で見たい。

私が、心震わすもの全て、翔にも見せたい。

そう思うほど切なさ募り、体も震え出す。

悲しみが、この胸を震動させるの。

流れ出す悲しみに立ちすくんでいたその時、二回小刻みなノック音が聞こえてきた。

翔!? 翔が、気紛れでノックしてくる時のノック音。


「……はい」


少し緊張気味に答えると、少し間が空いてからドアが開かれた。

……どっち?

服は翔輝君系だけど、何度か翔のフリして遊ばれてきたし、最近カジュアルも多い。

翔の場合、間違えると超不機嫌になって面倒。


「どうしたの?」


「……今いいかな?」


翔輝君の口調だ。

スッと緊張が解け、笑みを浮かべて頷くと、彼も小さく頷いて、白いソファーに脚を組んで座る。


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