サプライズ★フィナーレ
「汚すなよ。俺が、魂込めて創った世界に一つだけのドレスだ。……超似合う。白が似合う女は、なかなかいやしない。……最高に綺麗だよ。世界一……以上かもな」


バカ……撮影前に。

そんな優しい声で、幸せ絶頂でいた時の甘い言葉なんて聞きたくない。

私は、瞬きを繰り返しながらこう答えた。


「さすが私」


「ははっ、言うようになりやがった。俺に性格似てきたか? ……長年連れ添った夫婦みたいに、兄妹もって? ……それでいい。お前は、もっと自分に自信と誇りを持てばいい。広い世界で、もっともっと輝くべき女だ。……さすが我が妹。バラも引き立て役だな。意外とリラックスしてんじゃん。……最高のエリが、撮れそうだ」


「さぁ? 本番に弱いから」


「大丈夫。俺が、また最高のエリを撮ってやる。だからエリは、エリらしくいるだけでいい。……気楽に頼むぜ」


そう言いながら私の頭に手を置くと、今にも泣き出しそうに、でも穏やかに微笑んだ。

そして……泣き出したのは、私だった。

もう……こんな時にやめてよ。

バカ……バカ翔。


「メイク、直してもらいな」


再度ポンすると、踵を返して行ってしまった。
一人残された私は、手で口を隠しながら必死に声を押さえ、落ち着こうと目を閉じた。
そして頭の中に、"クロスロード"という言葉が浮かび上がり、まだほのかに漂う愛しい香りが、一秒でも早く消えることだけを必死に願うのだった。


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