サプライズ★フィナーレ
そして父のエスコートで緩い坂道を上がり、白いバラのアーチの手前で止まると、参列者と沢山の観客の方々が一斉に拍手してくれた。

……何だか本番の気分になりそう。

さぁ、トワイライトウェディングの始まり。

トワイライトは、夕暮れから夜へと移り行く最も美しく神秘的な時間帯で、マジックアワーと呼ばれるそう。

足元には、白とピンクのバラの花びらを敷き詰めた十五メートルほどの華やかなバージンロードが作られ、その先には思わず見惚れそうなほど美しいピンクの夕焼け空をバックにした、真っ白い花の祭壇がある。

その祭壇前には逆光の中、背筋をシャンとした長身の新郎役…………まさか……?

輝くような純白のタキシードに身を包む新郎の姿は、巷のイケメン俳優も霞んでしまいそうなほど素敵すぎて、見惚れる以外の選択はない。

この場にいる全ての女性を虜にしているに違いなく、この世の誰より愛しくて堪らない姿……。


「愛梨……今日から翔の妻として、幸せになりなさい」


「……」


まさか……本当の結婚式……?

翔と私の結婚式なの?

父に問い掛けようとした時、聖歌隊がアヴェ・マリアを歌い出し、父の頷きを合図にバージンロードをゆっくりと歩み始めた。

……やだ、もう信じられない。

涙が浮かび、視界がボヤけてくる。

……本当に本当に私達の……?

翔のどや顔が、目に浮かぶ。

有言実行にも程がある。

私は、たくさんの笑顔に見守られながら、まさに夢見心地でゆっくりと翔の元へと歩いて行く。

けれども目の前の翔は、予想に反してうっとりするほど魅惑的な微笑みで、私に手を差し伸べた。


「……人類史上最高の花嫁だな」


そう言って、私の右手を優しく手に取るのだった。
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