友情は初恋と引き換えに
オレンジ色の夕日が俺の走る廊下を照らして光の道を作る。



「この夕日……あの時に似てる」



俺とつむぎが初めて会話した日。



つむぎは覚えてねえかもしんねえけど。



昔のつむぎはため息が出るほど引っ込み思案で、俺が話しかけても無視ばかりだった。



だったら話しかけなければいいって話なんだろうけど…。



俺とつむぎは公園でしょっちゅう会うから、気になって気になって、話しかけずにはいられなかった。



会うたびに話しかけても答えてくれたことはなかったけど。



でもある日、ふと呟いたんだ。



『綺麗…』って。



俺はなんのことかわからなかったけど、つむぎが見上げているのは夕日だった。



俺はその時の夕日の良さなんてさっぱりわからなくて、心の中では『………』って感じだった。



でも、当時の俺にはつむぎが話してくれたことが何よりも嬉しくて、『だよな!そうだよな!』って必死に話を合わせてたんだっけ。



今日の夕日はあの時に似ている気がする。



もちろん、空の色なんて、その時の時間・天気、あとはその人の気持ちでころっと変わる。



だから似ているってだけで、あの時の夕日と全く同じじゃない。



でも、なんだかいい予感がする。



あの時みたいに、俺とつむぎの間で何かが変わりそうな…。



そんな気がするんだ。


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