青春メトロノーム



高校で探したのは、颯太と一緒に居ても違和感がない場所。

図書室の衝立の向こう側ならば、颯太と話していても不審がる人は居なかった。

バスが怖くて乗れない私に、同じくバスが乗れない颯太は一緒に登校してくれた。

学校に行って誰かに現実を告げられるのが怖くて、昼休みは颯太と一緒に居た。

小さなこの高校に、サッカー部が無いのを知って、私は颯太がいつも外を走っているのだと設定づけた。

暁が初日に、高校生の男が、昼ごはんにパン一枚はありえないと言いそうになる飲みこんだのを覚えている。

そうだった。高校生にもなって部活もしている颯太が、昼ごはんにパン一つは不自然だ。

次からはちゃんと颯太はおにぎり三つや、パンみっつに変わった。
食事の事までは私の脳も、考えていなかったんだろうね。

優菜が、私越しに颯太と会話する理由もきっとそうだ。

皆、颯太が見えないのに見えているふりをしてくれていた。



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