青春メトロノーム
お兄ちゃんの部屋に、私の0歳の時のアルバムがあるのは知っている。
でも赤ちゃんの写真だけが可愛かったらしい。
あとはほぼ隣の二人とは差も無く扱われた気がする。
「お前が退院する時ぐらいかな。母さんが貧血が治らなくて入院が少し伸びたんだ。その時に、急患であの双子が生まれた。帝王切開でさ、隣のおばさんだったし俺も気になって見てたんだ」
パシュっと煙草に火をつけると、口から灰色の煙を出した。
お兄ちゃんが私達の前で煙草を吸うことは無かったから、ちょっと驚くと、いつもの意地悪そうな口の端を上げてバカにしたように笑う姿で私を見下ろした。
「お前より何倍も小さくて、ガリガリで、片方は泣かないっていうから大慌てだぜ。母さんも心配し過ぎて倒れるし、双子なのに全然かわいくねーの。死ぬんじゃねーのって、触るのが怖いぐらい小さくてさ」
二人が未熟児なのは誰も隠さないから知ってたけど、今、二人の話を聞くのは耐えられない。正直、きつい。
「何の話がしたいの?」