青春メトロノーム
「おばさん」
駆け寄るとおばさんは申し訳なさそうに視線をさ迷わせてから、二階をちらりと見る。
「昨日は、うちの愚息が本当に、本当にごめんなさいね。大丈夫だった? 怪我はしなかった? 怖くなかった?」
「え、あ……」
昨日の病院でのベットに押し倒されたことを言っているんだと思うと、とたんに申し訳なくなった。
「いや、全然。全然ですよ。あれは、……本当に私が悪かったし、逆にごめんなさい。心臓に負担かけるようなことばかりさせちゃって」
「いいのいいの。心臓に毛が生えるぐらいが軟弱な暁にはちょうどいいのよ。上がる?」
おばさんにそう言われ、頷く。するとおばさんはリビングの方へ向かった。
「寝てたら、目覚ましでも耳元にかけて起こしてやって。さっきね、百花ちゃんのお母さんと、お兄さんから昨日の騒がしたお詫びにってプリン貰ってしまったの。食べてくれる?」
おばさんが冷蔵庫からプリンを出す。プリンは、おばさんたち家族分。四つ入れてあった。
「……百花ちゃんには見せられないから、ずっと家に呼べなかったけどね。奥にあの子の仏壇があるのよ」
「……うん」
「だけど、まだ百花ちゃんの横にはあの子が見えるなら、百花ちゃんが食べて頂戴。颯太は甘いもの好きじゃなかったからね」