青春メトロノーム
「颯太は壊してさ、修理に出そうとしたら買った店が見つけらんねえの」
「商店街でしょ? この前、おじさんとラーメン食べた時に見たよ」
私がそういうと、暁は目を見開いた。
「……そこで何か買ったか?」
「ううん。なんで? 買ってないよ」
「じゃあ何が売ってたとか」
「あ、一階にあるメトロノームがあったよ。おばさんもあのお店で買ったんだろうね」
あの安っぽい塗り方のメトロノームは、あのお店の空白を作っていた部分に置かれていたメトロノームだと思う。
「ところでさ、暁。おやつ――」
「百花」
暁は震える声で私の名前を呼んだ。
「メトロノームみたいに、一定に過去に触れられるって言ったら信じるか?」
「ん?」
「未来が進む分、同じぐらい過去に触れられる。俺は16まで生きた。だから、それと同じぐらい過去に触れられる」
目覚まし時計を持っている手が震えている。
私には暁が何を言っているのか理解できなかった。
「触れられるんだ。俺と颯太はあの日誓った。どちらかが生き延びれたら、百花を守ろうって。どちらかが死んだら、そいつの分まで百花を守ろうって」
つつーっと暁の目に涙が垂れた。
「なのに、俺は守れなくて、百花は颯太を必要としていた。俺みたいに病弱じゃなくて、毒を吐かない颯太を選んでいたよな」
「どうして急にそんなことを言うの。私、――私ほんとうに暁が生きていて嬉しかった。暁がいてくれて嬉しかった。また出会えてうれしかった」
「でもやり直せる」