青春メトロノーム


「俺は、お前に会えて本当に良かった」
時計を大きく振り上げると、暁は私をちらっと見る。

「俺は、お前が生きていたらそれでいい」

時計を床に叩きつける瞬間だった。
はじけ飛ぶ時計と、一階のピアノの鍵盤が一斉に音がなるような、庭の花が一斉に枯れてしまうような、世界の終わるような、崩れていく音がした。


過去に触れるメトロノーム。


現実に触れるメトロノーム。

「あいつは、もう居ないんだってば」
「……あの日には戻れないんだ」
二人が私にそう言うと、私の心はメトロノームの様に何度も行ったり来たり。



それでも私達の歩き方は一定じゃない。
何度も何度も立ち止まる。駆け抜ける。

置いてあったメトロノームを払い落し、自分達のテンポで歩き出す。


私は過去にしがみつき、現実に振り戻される。
戻されてたまるかと、過去にぎゅっとしがみつく。

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