青春メトロノーム


二人がまた喧嘩になったので、とうとう庭にいたお兄ちゃんが玄関から大声を出す。

「いいからさっさと始めるぞ、糞ガキども!」


私の思い出は、いつもそこに戻り、そしていつも何か大事なものが欠けていた。

心、感情、――彼の声。

花びらが舞って彼の全身を包み込むと、彼ごと花びらが散っていく。

もう、会えないのだと私が気づくのより心が早く拒絶した。




私はその花びらのじゅうたんの上に転がり、夢を見ていた。
未来の欠片。その一。


庭の花が全て枯れた。おばさんが大切に育てていた花が一瞬ですべて枯れた。
私はその散った花びらを集めて絨毯のように敷き詰めて、その上に転んでいた。


「おい、百花」

花びらは触れると冷たい。触れるとブルベットのような触り心地。
手でなぞると、ごわごわ。

……ごわごわしている? あんなに触り心地の良かった花びらの絨毯が、ごわごわしている?

「ねぼけてんなよ」
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