青春メトロノーム
「おれに、暁が帰ってきたって校長室に飛び出してさ。王子様みたいに格好良くなってるって言ってきたり。暁にはお腹に傷があるから、クラスマッチはお揃いのタオルにしようとか、お前は確かに暁が見えているようだった」
「……何を言ってるの」
「母さんが戻ったのは、暁が手術しても……助からなかったからだ。親父と母さんだけは、手術に立ち会ってたんだって」
「違うっ」
苦しそうに颯太が言い出すから、私は叫んだ。
「さっきまで暁はいた。死んだのは颯太の方だったって言った。私が颯太が見えるからって、心配で来てくれたの。でも、今は颯太は生きてる! 目の前にいる! なのに!」
なのにどうして次は暁が消えちゃうの?
「落ち着け。俺たちは――」
私がベットから立ち上がろうとしたのを、颯太が一歩踏み込んで阻止しようとした。
すると、颯太が何かを踏んで顔をゆがめた。
「いっ なんか踏んだ!」
「颯太?」
足の裏に張り付いたものを、手に持つと私の方へ向ける。
黒い矢印みたいな小さな部品。
それは暁の時計の針だった。
「……あんな、百花」