青春メトロノーム

颯太は私にその時計の針を手のひらに持たせると、首を振った。

「俺たちは、後悔してねえんだ。どっちが死んでもいいって。後悔してねえ」

「どっちが?」

「……悪い。俺たちは、お前のおかげで生きてたんだ。だからどっちが死んでも悔いはねえ。だから、――暁がこの未来を示してくれたんなら、この未来で俺と歩んでくれねえか?」

膝を拭いて、ベットに座っていた私を颯太は抱きしめてくれた。

ずっとそばにいてくれたけど、触ることは叶わなかった。
誰にも颯太の存在を認めてもらえなかった。
けど、誰も私に颯太はいないよって否定する人はいなかった。

今、本当に目の前にいる。
それを叶えてくれたのは暁だったのに。

なんで暁は消えてしまったの。

さっきまでこのベットで眠っていたのに、どうして眠っていないの。

欲しかった颯太のぬくもりは嬉しいのに、あふれる涙は幸せだけじゃなかった。

幸せなのに発狂しそうなほど、この状況に私は理解が追い付かなかった。

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