青春メトロノーム


颯太は、私が泣き止むまで抱きしめてくれた。
お兄ちゃんのせいで颯太もやっぱ口が悪いけど優しい。

でも私を必死に、誰よりも必死に助けようとしてくれた暁がどこにもいないのは、嘘だ。

昨日まで喧嘩して、触れ合って、そばにいたのに。

颯太もいて、暁もいないと嫌だ。
颯太も、暁も、どちらかでも欠けた世界の方が嘘だ。



 次の日、私は颯太とバスで学校に向かった。
 私は、颯太によればバス恐怖症ではないらしい。

小学校最後の、颯太のサッカーの試合。
私たちは始発のバスで向かったが、途中からは間に合うだろうからと体を温めたいという颯太の要望で歩いて向かったらしい。

事故はその後に起こり、始発で誰も乗っていなかったバスは、運転手の軽症だけですんだとか。

「うわ、どうしたの? その顔」

優菜が登校してきた私の顔を見て、驚いて飛び上がっていた。

泣きすぎて腫れぼったくなった私の眼は、いつもの三分の一ぐらいしか開いていないようだ。
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