青春メトロノーム

颯太が携帯を取り出して時間を見る。19時手前。
最終バスは18:58分。

今すぐにでもバスは来そうだし、最終バスに乗ろうと校門から部活生が体操服のまま飛び出していた。

「そういや、お前、美貴ちゃんに部活薦められてたよな。この学校、部活は絶対入らないといけねえのに」

「そうなの。昨日までは私は事故で足を怪我してたから部活から逃げれてたのに、今は逃げる理由がなくなってるの」
「逃げんなよ」

颯太がゲラゲラ笑うと、私に手を出してきた。

「手え繋いで帰ろうか」
「……なんで?」
「なんか昨日から、危なっかしいから」
「……なんで?」
「俺の愛が伝わってねえから?」

照れるぜ、と颯太は鼻をすするが私は差し出された手を見つめることしかできなかった。

「暁は教えてくれなかったけど、颯太は教えてくれるよね?」

颯太から伸びる影を、ただただ見ていた。

「颯太は、どうしてバスの事故のことを知っていたの」

伸びていた手が、しなしなと下ろされた。
そして、一歩私に近づくと、苦しそうな顔をした。

「百花はなんで俺だって気づいたんだ」
なんで俺だって気づいたんだ?

意味が分からなくて瞳を覗き込んだら、小さく舌打ちすると強引に手を掴まれる。

「ちょ、颯太っ」
「行くぞ」

「行くってどこに」

手を掴まれて、ぐんぐんと歩いていく。
何も答えてはもらっていないのに、進んでいく。

「颯太っ」

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