青春メトロノーム

「おれと暁は、約束したんだ。どっちが死んでも、どっちかがお前を守ればいいって。約束したんだよ、俺たちは」

颯太の足は、ラーメン屋を通りすぎ、雑貨屋のあった空地へ向かう。
つい先日、おじさんとラーメンを食べた時はまだメトロノームや炊飯器など、謎のラインナップが売っていたのに、もう売っていないようだった。

「ここ。ここで俺たち、親に時計を買ってもらったよな」
「目覚まし時計ね。颯太は壊しちゃったんだよ。小学生の時」

「暁は?」
「暁も壊したよ。昨日」

「やっぱり」

はあ、とため息を吐くと、立ち入り禁止って書かれた柵を長い足で潜り抜ける。
空き地になったそこには、穴だらけのソファと、バラバラの長さの木材と、伸び切った草が一面に生えているだけだった。

ぼろい商店街だったとはいえ、店は壊す人はいない。
なのでここだけ、空間が切り取られたようだった。

「俺は今から、お前にショックなことを言うかもしれない」
「うん」
「でもそれは、起こるかもしれなかった、未来の話。仮定だ。起こることはない、未来の話なんだ」
「なに?」
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