青春メトロノーム
私も柵を潜り抜けて、ぽっかりと浮かぶ空き地に立つ。
すると、颯太は苦しそうな顔で言った。
「起こるかもしれなかったある未来で、お前は死んだ」
「……私が?」
颯太は首を深く縦に振ると、私の手を握った。
「俺は、サッカーの試合会場に自転車で向かう予定だった。でも、お前は俺と暁と、そしてお前の両親にも内緒でこっそり始発のバスに乗り込んで、試合を見に来てくれようとした」
「へえ、けっこう私ってば大胆な行動をするのね」
「そのせいで、川の中でひっくり返っているバスに気づくのが遅れたんだ。誰一人、気づかなかった。俺は、自転車で会場に向かうとき、沈んだバスと川に投げ出されて真っ青になっていたお前を見た」
その場に座りこんだ颯太は、体を震わせていた。
泣いているのだと気づいて、私も膝をついて、颯太の肩を抱きしめた。
大きすぎて、私の手では足りない。
「俺は暁に約束したんだ。なのに守れなかった。おばさんもおじさんも陸月兄ちゃんも誰も俺を責めなかった。けど、俺は、お前がいない世界なんて苦しくて。俺は、俺が身代わりになるって、俺が死ねばいいって自分を責めた」
「……なんで。私が勝手に行動したことでしょ。それに、それは起こるかもしれなかった『もしも』のことでしょ。私は今、颯太の目の前にいる」
「ああ。俺は壊したんだ。お前をバスに乗せないように。時間を大きく歪ませた」
「なんで」