青春メトロノーム
颯太は背負っていたリュックを下すと、中から筆箱とお弁当箱、その隙間にボロボロになったノートが入っていた。
てっきり暁が持っていると思っていた、ノート。
「このノートに、書いていたんだ。お前を助けたいなら、時計を壊して過去を修復しろって」
「見せて」
開いたノートには、暁の字で『時計を壊せ』と確かに書かれていた。
「だから俺が死ぬはずだった。未来を変えて俺が死ぬはずだったのに――暁が死んでしまった」
「ちがう。暁は生きてた。昨日まで生きてて、時計を壊したら暁が消えてたの」
「だから、そうなんだよ。俺たちは、自分は死んでもいいから、自分が死んだらお前が百花を守れって、そう約束して、死ぬ未来を選択したんだよ」
二人は――。相手に私を託したら、死んでいたのは相手だったとでも言いたいのだろうか。
でも颯太の目を見ても、嘘をついているようにも思えない。
私に颯太が嘘をつくとは思えない。
「でも俺も、あいつがいない世界なんて苦しいよ」