青春メトロノーム


全部、花弁の見せた夢だったらよかったのに。
私たちは子どもで、いつも何か間違えてしまう。
いつも何かが欠けていて、そのせいでほしいものはいつも全部は手に入らない。
手に入らないのに、手に入らない世界の方が嘘だと、私たちは抗うのだ。


『なあ、百花。サッカーの最後の試合、見に来てくれねえか』

試合の日だった。颯太の、小学校さいごのサッカーの試合の前夜だった。

時は、大きく過去に触れた。メトロノームみたいに大きく、振り子を後ろへ伸ばしてくれた。

『ごめんね。その日は、颯太も暁も大切だから、私、暁の手術に立ち会う』

颯太は驚いた顔をしていた。私は格好悪いぐらいボロボロと泣いてしまっていたんだと思う。この時間に触れることができたから。この時間で、私は二人を救う。

絶対に、絶対に、私はこの過去に触れられた今、二人との未来を掴むんだ。

掴んだ未来をぎゅっと握りしめて、時は振り子のようにびゅうっと今に戻る。

驚いていた、小学生の颯太を見ながら私は微笑んだ。

これで私の運命の勝ちだ。


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