青春メトロノーム

「でもよ、ババアが俺たちに作る予定だった弁当、百花に作ってんだぜ」
「だから代わりに、おばさんが颯太くんたちの朝ご飯作ってるでしょ」
「おばさん。今日も美味しいごはんありがとう。俺、お弁当も食べたいな」
「……暁くんは本当に調子がいいわねえ」

と言いつつまんざらでもなさそうにお母さんは二人のお弁当をつくってあげていた。

二人が生きていた場合、こんな風に毎日の朝は賑やかなんだ。
生意気そうな颯太も、うちの親にまで甘い言葉を吐く暁も、私の目の前にいてくれている。
私はそれが嬉しかった。

間違いじゃない。私は、間違っていなかった。
目の前に二人がいる。それがうれしくて、下を向いて唇を噛みしめて耐えた。

私の視界には、置物みたいになった私の足が映っている。
けど、二人の命に比べたら私の足なんてどうってことない。

こんな足が二人の命の代わりに駄目になったんなら、それでいい。

私は、やっと幸せの時間を手に入れたんだ。



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