青春メトロノーム
「俺の就職祝いパーティーと、暁の手術成功祝いに、なぜか俺が肉を買い、火をつけ、肉を焼く」
「そして颯太が、火の中にピーマンを捨てる」
「それな」
私と暁が笑うと、お兄ちゃんも苦笑した。
「お前らなあ。ほんと、死にかけた人間かよ。ほら着いたぞ」
校門の前に車を止めると、暁が慣れた手つきで折りたたんでいた車椅子を広げて、助手席を開けて持ってきてくれた。
「あーっと」
いつもどんなふうに乗っていたんだっけ?
ここで乗れなかったら、不審がられちゃうよね。
あたふたしていたら、ふわりと体を持ち上げられた。
「お前、筋力つけるリハビリサボるからだぞ。ベットから落ちて手が痛いんだろ」
お兄ちゃんが車椅子までまた体を抱えてくれた。
手の力がいるのか。じゃあ頑張って練習しよう。
「百花―っ」
「優菜、って、ひえ」
いつもより厚化粧すぎて一瞬誰か分からなかった優菜が、そこにいる。
驚いて、思わず声をあげてしまいそうになった。
いや、あげたか。
せっかく元がよくて美少女なのに、どうして自分からそんなことをするんだ。
「優菜ちゃん、今日も可愛いね」
「む、睦月おにいさん……」
そしてお兄ちゃんも、優菜にそんなことを言わないでほしい。
先に到着していた颯太が、私たちを見ると駆け寄ってきた。
「ほれ、行くぞ。百花、宿題映させろよ」
「はあ?」
「っち。颯太、待ちなさいよ」
優菜が、私の車椅子を押していた颯太を引きはがすと、自分が押し出した。
「お前、すぐ睦月兄ちゃんの前でいい格好しようとするからなあ」
「だってえ。ってか、まって」
私が二人に奪い合いをされ少し目がくらくらしてきたら、暁が真ん中にすっと割り込んでくれた。
「やめろよ。百花が朝ご飯吐くだろ」