青春メトロノーム
「きゃ、百花、ごめんね」
「くそ女のせいだ」
「くそ颯太は息もせずに黙ってて」
二人が私から離れて、蹴りあいをしている。
「じゃあ、迎えに来るからな」
「あーん。おにいさーん、またねー」
優菜がぶんぶん手を降る、そのすきに私は暁に車椅子を引いてもらって特別棟校舎へと向かう。
部活をしてこなかったから知らなかったけれど、特別棟は、吹奏楽の楽器を運ぶためのエレベーターがあった。
そこで私はエレベーターに乗って、三階の教室には渡り廊下を渡って登園しているらしい。
「ごめんね、暁。明日からは自分でするね」
二人がまた喧嘩してるのが渡り廊下から見える。
どんなに時間を変えたって、あの二人は仲が悪いのは変わらないらしい。
「意外だな。お前いつも偉そうに俺たちに押せ押せ命令するくせに」
「っそ、そうだっけ? まあ、いつもしてもらってるからかな。生まれ変わったって言うかあ」
「そうか」
暁がそういうと、渡り廊下の真ん中で止まった。
「おれと颯太を許してくれるために、わざとそうしてくれてると思ってた」
「……ええ?」
暁の方を振り向くと申し訳なさそうな、泣き出しそうな顔をしている。
「おれと颯太が喧嘩したときに、間に入ってくれたお前を俺たちは突き飛ばしちゃってさ、戻れるなら今すぐ戻りたいよ」
暁の言葉に、すうっと私の中に、経験していないはずの時間が流れ込んできた。