青春メトロノーム



夢を見ているようだった。

私と暁と颯太。

同じ黒板を見て、同じ文字をノートに写し、同じ空間で笑っている。

長い夢を見ていた気分だ。長くて、苦しい夢を見ていた気分だ。

今、この時が本当の時間で、私が颯太がいると信じて生きてきた時よりも、暁が消えてしまった世界が偽物で今、この瞬間が私が生きている時間だと思う。

三時間目が終わると、颯太が購買にダッシュして私と颯太の分のメロンパンを買ってきてくれた。
お弁当があるくせに、サクサクのクッキー部分が美味しくて出来立ては甘い香りが校内を占領するから、身体が弱い暁と足の不自由な私のために颯太は買ってくれた。


お昼は、図書室の返却カウンターで四人でご飯を食べる。

優菜がサンドイッチを作っていて、颯太が一つ摘まみ食いしたくせに、自分は優菜に何もあげないのでそこでまた喧嘩が起こっていた。

私と暁はお弁当の横に、沢山の薬が置かれていて二人で苦笑しながら食べた。
それでもこの世界が好きだ。この世界が、私の本当だから。

「あ、クラスマッチのタオルの予算とかレシート貼ったノートって、百花が持ってたよね」
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