青春メトロノーム
「そうだっけ。ごめん、どれだろ」
「カバン勝手に開けていい?」
優菜に両手で丸っと合図すると、教室に向かった。
「なあ、暁。からあげとピーマン交換しようぜ」
「レートがおかしいだろ。エビフライとだ」
「じゃあおまけにピーマンもつけてやるよ」
「ピーマンは食べろ」
颯太のピーマン嫌いは相変わらずらしい。
互いの弁当箱にピーマンが行き来していて可哀そうだった。
「お兄ちゃんが、野菜食べない人はバーベキューお留守番って言ってたよ」
「まじかよ。ピーマン持っていかなければいいだろ」
「お前、どんだけピーマン嫌いなんだよ」
ケラケラ笑いながら、弟である暁が結局ピーマンを食べてあげていた。
バーベキューでは本当にピーマンは持って行かない方がいいかもしれない。
暁が可哀そうだ。
「ねえ、百花。ノート無かったけど、これ、なに?」
ひょいっと現れた優菜の手には、端がボロボロで薄汚れたノート。
それをみて、私はハッとする。
「それ、返して!」
隠さないとと思うより早く、颯太が『懐かしい』と手に持った。