青春メトロノーム


「神様がいるなら、一番俺たちのために頑張ってきた百花が事故にあうのは許せねえな」
「俺たちが悪かったとしても、不自然な事故だった」

二人は納得していない。
でももう時計はない。証拠はない。言ったって、信じてはもらえるわけない。
私だって、今の幸せをかみしめるために、起きたことを必死で片づけて忘れてしまおうとしているのだから。
「何か知ってるなら、俺たちに教えてほしい。ちゃんと、教えてほしいんだ」
 暁が屈んで私の顔を覗き込む。優しいね。
優しいから、私が颯太がいない世界は嫌だって泣いたとき、暁は会いに来てくれたのに時間を壊して、自分が消えようとした。
 自分のことじゃない。私を優先して、消えたんだよ。
「俺もだ。ずっと一緒って約束したんだ。隠し事はしないでほしい」
 暁が転校してから私をずっと支えてくれていたのは、颯太だ。誰よりも長い時間私を支えてくれていた。そして暁がいない世界は寂しいと言ってくれた。
 私が死んだ世界を、最初に変えてくれた颯太も、自分のためじゃなく私のためだった。

「なあ、百花」
「百花」


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