青春メトロノーム
それでも、言えば終わりになるなら終わりする。
私たちが間違えた分岐点の話なら、私は伝える。
「暁の手術に付き添わずに、颯太のサッカーの試合に行った日、私はこっそり見に行ってバスの事故で死んだらしい。颯太がその時、時をやり直してくれた」
私の言葉に、二人の眉の間に皺が増えた。
「暁が死んだ時、私たちはバスには乗らなかったけど、自転車で試合に向かったの。でも暁がいない世界は、偽物だから。私が時を壊した」
言葉にすると、とても稚拙に感じた。嘘みたいな話。
私の頭がおかしいと思うような、話。
「それでバスの事故で颯太が死んだ時、私は暁も颯太もいない世界で、颯太が隣にいるって思いこんで生きていた。すると暁が私を助けに来てくれて、世界を戻してくれたの」
馬鹿みたい。全部、私の感情だけで時を壊してる。
「もういいでしょ。今が一番私は幸せなの。暁もいる。颯太もいるの。嘘じゃないの。この世界が私の、求めていた本当の世界なの」
大粒の涙が足に落ちても、冷たくもない。温かくもない。
摘まんでも痛くもない。
けど本当にこの世界に居たいから。
「お願い。この世界を否定しないで。この世界は嘘じゃないの。幸せな世界なの。私、もう二人がいない世界は嫌なの」