青春メトロノーム
わんわんと子どものように泣いた。伝えるだけだったのに、思いは涙と共に流れていく。
ああ、私はここで生きていたい。もう誰かがいない世界は嫌なの。簡単に消えてしまう世界は嫌なんだ。
「百花」
泣いていた私の涙を、指先で払ってくれたのは暁だった。
「今まで、一人で何度も辛い思いをさせて悪かった」
「暁」
「……辛かったな」
颯太も私を後ろから抱きしめてくれた。
二人は、私の夢みたいな話を信じてくれていた。
「俺も、百花がいない世界は偽物だって思う」
「ああ、俺も。俺は暁も百花もいない世界は嫌だな」
はーっと深く深くため息を二人は吐く。
そして、ノートの隅の私の字を指さした。
「このメトロノームを壊してって?」
「それ……私の字だけど、私は書いてない」
首を振る。私だけど私ではない。覚えていないのかもしれなけいけど、自分で書いたことはないつもりでいる。
「ふうん」
「なるほどなあ」
「まあ、話してくれてありがとうな」
二人は私の頭を撫でたり、お弁当箱の包みで目を拭いてくれた。
それ以上は追及されなかったので、これで終わりなのだと思っていた。
これで、二人はいつまでもこの世界で一緒に生きていられる。