青春メトロノーム
「暁が?」
「うん。優菜のやってる吹奏楽なら、俺ピアノ弾けるからさ」
「ひえ。女子ばっかだから、暁争奪戦が起こりそうだね」
優菜がいるからほかの子を押さえてしまいそうだけど。
なのに暁はふっと子馬鹿にしたように笑う。
「俺は一途だってば」
さらりと言ってしまうその言葉の意味を、私はまだ知りたくなくて聞き逃す。
二人のその言葉は、まだ私の中で選べない。三人がいいと望んだのは私なのだから。
そしてお兄ちゃんがやってきて、私と暁は病院へ。
暁は定期健診。私は作業療法士さんとリハビリ。
今日は座った位置からベットへの移動。
車椅子からのベットへの移動と、車いすからトイレへの移動はほぼ完璧らしい。
「車からの車椅子の移動の仕方が難しくて」
「あら、じゃあ手の筋力をもう少し鍛えてみましょうか。コツはね」
ふむふむと真面目に聞く。下半身のマヒなのだから当然トイレも感覚が分からないらしく、これだけは誰にも手伝ってもらいたくないのでちょっと大変だった。
けど、あとはリハビリを頑張れば自分でできそうな気がした。