青春メトロノーム
「百花、お前も泣いてねえで何か言えよ! この皮肉野郎を黙らせろ」
「百花、俺が居なくなったら颯太を頼むな。テストとかテストとか、あとテストとか」
「……う」
私の言葉に二人は注目する。
何を言うのか、待っていてくれた二人が私の顔を覗きこんだ。
「うわぁぁぁん! 離れたくないよぅぅぅぅ!」
大声で子どもの様に泣く私に、二人が顔を見合わせてため息を吐くのが分かった。
「や、話がふりだしに戻るから止めて」
「最後ぐらい笑顔で送り出せよ!」
「誰が『最期』だ」
「はあ!?」
二人がまた喧嘩になったので、とうとう庭にいたお兄ちゃんが玄関から大声を出す。
「いいからさっさと始めるぞ、糞ガキども!」
私の思い出は、いつもそこに戻り、そしていつも何か大事なものが欠けていた。
心、感情、――彼の声。
花びらが舞って彼の全身を包み込むと、彼ごと花びらが散っていく。
もう、会えないのだと私が気づくのより心が早く拒絶した。