青春メトロノーム
「……颯太」
ひょいっと図書室のベランダから出てきた颯太は、暁が消えた廊下を睨みつける。
「あいつも6年、闘病生活してたんだし。やっと再会できて、感情が上手く説明できなくて爆発したんだろ」
「颯太は、暁の事がよく分かってるね。私は全然分からないのに」
「まあ、お前よりはな」
暁の言った通り颯太にパン一つは足りなかったのか、メロンパンをどこからか持って帰ってきた。
ソレを歯切れのいい音を立てて開けながら、颯太も心なしか元気がないように見えた。
「颯太も、もう三人で一緒に居るのは嫌だ?」
「そんな泣きそうな顔で言われたら、嫌だとは言えねえじゃん。馬鹿じゃねえの」
「だって」
「俺は三人でも俺だけでもいい。ただ変わらねえ。俺だけは変われねえで隣にいるよ」
一口で半分もメロンパンを食べながら颯太は言う。
そうだ。
颯太は小学生の時のまま、変わらずにガキっぽいけど、優しい心のまま隣に居るんだ。
「うん。……私もそれがいい」
颯太の隣は、天気の良い日の図書室の中みたい。
ぬるま湯ではない。陽だまりの中、私はその日を一杯浴びて丸くなって小さく眠る猫になりたかった。
猫が良い。