青春メトロノーム
申し訳なさそうに言いながら通してくれたリビングは、部屋の隅に段ボール、雑巾とバケツが置かれていたけど散らかってはいなかった。
ソファやテレビ、そして大きなグランドピアノだけでなんだか簡素。どちらかと言えば寂しい。
けれど、窓から見える庭は、すっかり雑草が抜かれ花壇の土がほじくり返されていた。
半分以上、ピンク色の花が我が物顔で揺れていた。
「花を植えようと思って、さっきまで弄ってたの。家の中はまだ何もできてないのに、花壇を先にしちゃっておかしいでしょ」
クスクスと笑いながら、おばさんはジュースと出してくれた。
紅茶やコーヒーみたいに熱い飲み物が苦手だと言っていたのを、忘れずにいてくれたんだろう。
カウンターに置いてから、桜色のカーテンを段ボールから引っ張り出す。
「この家には、花が足りないのよね」
花が――。