青春メトロノーム
目覚ましを探す手は、無残にも宙を切る。
「百花ちゃん……。あのね」
帰り際、靴ひもをを結んでいたらおばさんがが呼びとめた。
「何?」
「颯太のことなんだけど……」
「うん?」
おばさんは視線を泳がせた後、口を深く閉じた。
「今日、夜ごはんを百花ちゃんの家に招待されたんだけど、颯太は来れないの。私と暁だけお邪魔するわね」
「夕ご飯来るの!?」
ドーナツ届けてとお母さんに言われて、用意周到だなって思ってた。
そうか。親同士は連絡し合ってたから、今日帰ってくるって知ってたんだ。
「大丈夫だよ。颯太は部活でいっつも遅いし、泥だらけでシャワー直行だもん。あ、おばさん、私もあのメトロノーム欲しいな。オススメのメーカー、夕ご飯の時に教えて?」
「……百花ちゃん」
おばさんは複雑そうに笑った。
「貴方には、決められたリズムをなぞるのはまだ早いと思うわ」