青春メトロノーム


ピピピピピピッ

何度も何度も、同じ音が聞こえてくる。

こんな規則的な音、不快でしかない。

嫌い。嫌いだ。メトロノームだって、五月蠅くて嫌いだ。

「これ、メトロノームじゃなくてお前の携帯のアラームだろ」

目覚ましを止めようと彷徨っていた私の手を、誰かが乱暴に叩いた。

「……え?」

「遅刻すんぞ」

「ええ!?」

ガバッと起き上がると、既に制服姿の暁が立っていた。

「お前、髪がハート形になってる」
「お」
「お?」
「乙女の部屋に入ってくるな!」

びっくりして叩きだした。
ここは私の部屋だ。間違いない。
読みかけの漫画が散乱した机や、床に投げ捨てたままの鞄など昨日のまま。
片付けてもいない乙女の部屋に無断で入るってどんな神経してるんだ。

「言っとくけど、ノックした。アラームが五月蠅かったから無意味だったケド」
「し、信じらんない」
「信じらんねえなら良いけど、遅刻するのは本当だからな」
「へ……」

携帯の画面を確認すると、7時30分。
8時15分には朝自習が始まるので、もう一時間切っていた。

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