青春メトロノーム
「うそ! あと10分で家を出なきゃ遅刻じゃんか!」
「急げ急げ。俺は下で何か摘まんでくる」
階段を下りる音が聞こえるのを確認すると、私はポンポンとパジャマを放り投げながら着替えた。
お父さんとおじさんはもう既に居なかった。
自力で起きたんだと思う。おじさんは体内時計とか持ってそうだから起こしてくれたんだろう。
で、お母さん達は寝室で、倒れるように眠っていた。
こんなぐっすりな母は16年間一度も見たことなかった。
「信じらんない。もー!平日に歓迎会は止めた方が良かった!」
降りて、冷蔵庫から牛乳を取り出して飲んでいたら、玄関で暁が待っていた。
「バスなら7時50分のに乗れば間に合うんだろ?」
「……あんな大量にとれた網の中の魚みたいなのは嫌だ」
「と言うと思った。乗れよ」
人差し指で自転車の鍵を回しながら、暁がにたりと笑った。