青春メトロノーム
「あ、やっぱあの恵方巻きお前作か! 置いてあったから勝手に食べた。具材と米は上手かった」
「素直に美味しいって言いなさいよ! ……暁に伝言頼んだのに」
「何か言ってたかもしれないけど、朝練に急いでたんだよ」
颯太は何もないと言わんばかりに明るく笑う。
わざとらしく。
「暁が戻ってきて嬉しいのに、なんか今のままはヤだよ」
取りだしたお弁当箱をぎゅっと握りながら、声が震えた。
暁の心は遠いけど、6年さらに一緒に居た颯太には弱音が吐ける。
それぐらい、二人のいる位置がもう違っていた。
「俺も一応嬉しいけど、複雑っていうか、この関係も終わりっていうか」
「颯太?」
「お前もこうなるって分かってたから、俺が此処に居てやってんだ」
「颯太まで何を言い出すの」
昨日から、全く私の頭が付いていけてないのに、なんでそんな事。
「おーい。百花、いるのー?」
丁度、タイミングを見計らったように優菜が図書室へ入ってきた。