青春メトロノーム
「タオル」
「へ?」
気づけば、逃走準備が整った颯太が、図書室の入り口に立っている。
私に背を向けて、顔をかくして。
「大きなタオルがいい。頭に巻くとか、雨が降ったら身体を隠すぐらい大きなやつ」
「えーっと、颯太?」
どうしてタオル?
そう聞く前に、走るように逃げてしまった。
「颯太なんて?」
「聞いてなかったの?」
「颯太の声はシャットアウトする様に身体ができてるの」
弁当を食べながら平然とそう言ってのける優菜に嘆息しつつ、正面を向く。
「タオルだって。頭に巻きたいらしいよ」
「えー。タオルを頭に巻くとかダサいじゃん。なんで?」
「それは私も思ったんだけど……」
お弁当に伸ばした手が、止まる。
もしかしたら?
「暁の為かもしれない」