青春メトロノーム
「私は無理だよ。パス」
「なんでよ。ピアノ弾けるじゃん」
「リズム感がないの。逆に暁のおばさんにもう一度習いたいなって思ってるから部活はパス」
「でもさ、色んな人と交流するのは大事よ? いつまでも颯太に甘えてばかりでいいの?」
「甘えてない。甘えてるのは颯太の方よ」
「あんた、自分以外が颯太の悪口言うと機嫌悪くする癖に」
嘆息されたけれど、こればかりは譲れない。
私が颯太を頼ったことなど一度もないんだから。
「アンタがそんなに頑なだから、暁君もこうしてアンタのために手伝ってくれてるのよね。感謝しないと」
「暁は試合に出れないからでしょ?」
鞄を持って立ち上がった私を、優菜は友達とは思えないような冷やかな目で見てきた。
幼稚園の時から友達として一緒に居るから分かる。
優菜は真っすぐで曲がったことは大嫌い。努力家だから怠け者にも容赦ない。
おまけに容姿端麗、眉目秀麗。天は彼女に二物、三物どころか、全能力を渡したかのようなパーフェクト。
そんな優菜が、私を曲がったモノのように見て、すぐに同情的に眉をひそめた。
「あんた、いつまで現実を見ないつもりなの?」