青春メトロノーム
優菜の言葉は私には理解できなかった。
現実なら、見てる。
この世界が私の現実だ。
飛行機雲が空を割るのが一瞬なように、誰も私の空は割れない。
「ブス。何考え込んだ顔で歩いてんだよ。車に突っ込むなよ」
「噂をすれば颯太だ」
学校の周りを走るトレーニングは終わったようだ。
息を切らして座りこむ颯太が居た。
「俺が格好良いって噂なら間に合ってる」
「馬鹿。そんなこと言うから馬鹿って言われるのよ」
言われたのは……私だ。
誰に言われても私の声は宙を切り、誰の声も耳を通りぬける。
私の思いは、過去に止まったまま現実には戻ってこれないんだ。