青春メトロノーム
「百花! 百花、百花っ!」
学校の校門で、これまた幼稚園からの友達である優菜が立っていて、私を見るなり全力疾走で此方へ向かってきた。
「おはよー、優菜。どうしたの?」
「やばいって。絶対その顔は百花も知らなかったでしょ? ビックニュースだよ。本当に! まだドキドキしてる!」
「お、落ちついて。全然話の脈絡が分からないよ」
靴箱まで歩きながら、優菜はヤカンのように顔を真っ赤にして興奮している。
中学の修学旅行でモデルにスカウトされたこともあるぐらいのクールで長身美人の彼女が、大興奮でキャーキャー騒いでるのを見るのは初めてかもしれない。
「校長室に暁くんが居たの!すっっごいイケメンになってたよ! やばいって。芸能人!? 都会パワー!?」
「え……?」
ポテンと上履きが落っこちた。
足元で一回転して止まる。今日も晴れだろう。
そんなどうでもいいことを考えるぐらい動揺していた。
「……暁っ」
靴のまま駈け出すと、校長室へと向かった。