青春メトロノーム
「帰って来たんだから、ちゃんと意識してもらおうと思ってる。ってか、ちゃんと告白した方がいい?」
「ちょ、ちょっと待ってね。今日はクラスマッチの準備の為に来たんでしょ」
準備を進めようよとケースの蓋を閉めながら言うと、私の手の上に暁の大きな手が下ろされた。
骨ばっていて、ごつごつした大きな手で思わず思考が固まった。
まるで大人みたいな大きな手。
「俺が無理して戻ってきたのは、お前が悲鳴を上げてたからだ」
「悲鳴なんてあげてない」
「あげてる。ずっと、お前の心が壊れて叫んでる。皆気づいてるけど、言えなかった」
ぎゅっと強く握られて思わず身体が強張った。
暁の顔を見上げると、泣き出しそうなのに強く瞳が光っている。
「誰にもお前を救えないって言われたけど、そうは思わない。だって俺はここにいる。成功する確率なんて――颯太がサッカーで優勝するより低かったんだから」
「颯太を例えないで!酷い!」
「お前、――俺と颯太ならどっちを選ぶ?」