青春メトロノーム

とぼとぼと駅まで歩いた。
空はオレンジ色に染まり、上の方からゆっくりと青のペンキが落ち始めている。

周りも仕事帰りのスーツの人たちが増えだした。


ふと目に止まり立ち止った先には、古びた家電屋があった。
ここで私と颯太と暁は、小学生になったお祝いに目ざまし時計を買ってもらった記憶がある。

私はひよこの目覚まし時計。セットした時間に、卵の殻からひよこが飛び出すユニークな時計。
暁と颯太は、同時の人気ゲームのキャラクターだった。
双子の癖に趣味は合わないのか、全く違うゲームのキャラだった。

颯太は二段ベッドの上から落としてすぐにダメにしてしまった。

私は丁寧に使っていたけれど、ある日を境にセットしても音が鳴らなくなったので、今は携帯のアラームに代えて、クローゼットにしまった。

暁はどうしているのだろうか。

「……百花ちゃん?」

< 65 / 201 >

この作品をシェア

pagetop