青春メトロノーム
「おじさんの家は、昨日からピンクの花が咲いてて綺麗だったね」
「ああ。ストック、ひなげし、スイートピー。ローダンセ、スターチス」
「おじさん、物知りだね」
「妻が花を好きだったからね。それに一応、農業系の研究しているし」
良く見れば、スーツ姿のおじさんの手に、黒くて重そうなビニール袋がぶら下がっていた。
私が見たのに気づいたのか、颯太みたいにくしゃくしゃにして笑った。
「花壇の栄養にって腐葉土だよ」
「ふーん?」
「遅くなってきたし、一緒に帰ろうか?」
おじさんい言われて由来だけれど、私は首を振った。
「んん。まだフラフラしとく。颯太が部活終わるの待ってようかな」
「……」
途端におじさんの顔が暗くなる。
そりゃあ颯太の部活はいつも遅いけれど、田舎過ぎてここら辺の人たちは大体気心しれた人たちだし。
おじさんが何か考えて立ち止ったままなのを尻目に、ふらりと家電屋さんへ入った。
個人の経営店だけあって、フリーダムな品ぞろえだ。
炊飯器の隣に加湿器が、両方埃かぶって並べられている姿はシュールだった。
小さな店で、私と颯太と暁の三人とお母さんとおばさんの五人が入ったら満員になりそうな狭さだ。
「おや、君は百花ちゃんかな」