青春メトロノーム

競馬のラジオを聞いていたおじいさんが、へらりと笑う。
前歯がないその笑顔に、適当に手を振ると、――奥へと進んだ。

「お、みっけ」

『現品限り 2000円(税別) メトロノーム』

軽そうなプラスチックに安そうに見える薄いピンク色が塗られた玩具みたいなメトロノームを見つけた。

価格ボートが黄ばみ色あせている様子から、何年も飾られたままのように思えた。
隣が少しスペースが開いているので、もしかして誰か買ったのかもしれない。

(うーーん)

百円ショップみたいな色に、2000円出すのは悩む。

500円とか1000円とかならなけなしのお小遣いから出しても良いけど。

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