青春メトロノーム


メンマ、ネギ、チャーシュー、入れ放題のにんにく。

おじさんは何度もチャレンジするが、麺を持ち上げる度に眼鏡が曇るので、とうとう眼鏡を外した。

一つ一つの動作が穏やかで、おっとりしていて、颯太とかけ離れている。
なのに、メガネを外すと、やはり大人になった颯太の顔にしか見えない。

「おじさんたちって、離婚してたの?」

「ぶっ」

メンマを吐きだしたおじさんは、小さく『ごめん』と謝りながら、口を拭く。

「最近帰ってきたのは、なんで? 手術っていつ成功してたの?」
「えっとね、ごめん。最近までおじさんは百花ちゃんと二人っきりで会話は禁止されてたんだ。大人の事情は話せない」
「禁止されてたって誰に?」

うちの親がそんなことをするはずない。
でもあんな穏やかなおばさんがするとは思えないし。

「んー。小六の颯太の最後の試合の日。あの日にどうしてもおじさんが仕事で二人を送って行けなかったの覚えてる?」

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