青春メトロノーム
手招きする颯太を見て私は小さく頷くと、おじさんに『ごちそうさまです』と会釈して店を出ようとした。
「待てよ。どこに行くんだよ」
「颯太と帰る。……暁、変わっちゃってなんだか怖いから嫌。おじさんにも態度が悪いしおかしいもん」
だからごめんね、と暁の横を通り過ぎようとしたら、腕を捕まえられた。
「怒鳴りこんできた俺よりも、手招きするだけの弱虫がいいのか」
「暁、止めなさい」
「お前の事、どんなに心配しても、――お前が逃げてたら仕方ねえんだ! 何も変わらねぇんだ!」
暁が叫ぶので、おじさんが周りの席の人に謝罪しながら、急いでレジへと向かう。
暁は額や頬に汗が伝って、息が荒かった。
――手術が終わったばかりで、まだしっかり療養しなくちゃいけないはずなのに。
「……暁は、私が始発バスで怪我したのは、車で送っていかなかったおじさんが悪いって言いたいの? この6年、おじさんを責めて離れてたの?」
「っち。お前の事だけじゃねえけど、どこにも怒りをぶつけられなくてちょっとだけ関係がおかしくなってたのは本当だ」